開業から五ヶ月

開業して五ヶ月が過ぎた。たいしたコネもなく、勢いだけで始めた割には予想を越えて仕事があり、短納期に追われた。加工賃の安さをあらためて識っ た。ふと、まわりを見ると次々と同業者が潰れていく。値段はこれでもかという程に叩かれ、仕事は人件費の安い中国へ流れていく。今のままでは、この国から 製造業はなくなってしまうのではないかと思う。一方で、この現実の流れはやむおえず、ものづくりにおいて、どこにも真似のできない特化した技術を持った者 だけが生き延び、その結果、淘汰され、仕事として利益を得ることができるであろう、とも思う。NHKのテレビの特集で、日本の製造業の置かれている状況、 打開策はあるのか、といったテーマで番組が放送されることもあり、それらを観て確かに感心することも多いが、わたしはなぜか、やるせない気分になる。

最近、勝組、敗組といった言葉をよく耳にするようになったが、わたしにはその言葉のいわんとする意味がわからない。組とは組織のことだろうか。勝、負とは結 果のことだろうか。企業を評価する基準として使われているようだが、本当の結果が出るのは5年後、10年後のことであり、現時点では、未来に向けて継続し ていく為の方法を厳密に考え、模索していくしかない。勝組、敗組といったマスコミ等で便利そうな言葉を使う必要性を、わたしは全く感じない。

トヨタ、ホンダ、日産をはじめとする自動車業界はおおむね好調らしい。当たり前だ。海外に工場を設け、安い人件費で販売価格を少し下げても利益が出るシステムにシフトしたからだ。他の産業もシステムを追随している。結局、差額で儲けているだけだ。日本と中国の物価の差。やっていることは商社とかわりない。商 社をバカにしているわけではない。差はいずれなくなるであろう。その時、わたしのように実際にものづくりに携わる者は、製造業を名乗るそれら日本の企業を けっして信用しないだろう。