お礼

当工房はこの6月で創業丸5年になります。幸運にもこうやって継続して来られたのは、まず当初、どこの馬の骨とも分からない当工房を見つけ出し、そ の後も仕事の発注をいただけている取引先の方々、そして過去に在籍していた会社の仲間や古くからの友人、同業の仕事仲間や家族達からの応援があったからこ そです。この場を借りて心より感謝します。

「えっ、独立って、ブライダル分野の経験あるの?」

今でも笑い話だが、2002年の創業当時、社名の「ウェルディング」と「ウェディング」を勘違いされて、そう聞かれたことがある。

その場にいた仲間が「失礼な!」と、すかさず笑いながら突っ込んだが、聞いた当人は婚約したばかりということもあり、結婚式場の予約やもろもろの準備などに追われ、関心事がそちらに向いていたのだろう。それは全く失礼な事ではないよ、とわたしも笑いながら言った。

「ウェルディング」は日本語の「溶接」にあたる英語だが、その言葉は確かに専門用語的で一般に使用される言葉ではないので、見間違える人がいるのも想像できた。 その位知られていない言葉を社名のなかに入れるのは、少々の冒険でもあったが、もし聞かれた時にはその都度説明する事で「ああ、なんだ溶接の事だったの」 「ああ、やっぱりそうだったの」などと知って納得してもらえれば良いと判断してのことだった。

話しは少し変わるが、わたしは中学二年生の時 (1976年)にロックミュージックの洗礼(リアルタイムではないがザ・ビートルズのオールディーズというアルバム)を受け、今に至っている。まずは掃除時間にほうきを手にして格好を真似、ようやくギターを手に入れるとコピーバンドを組み、文化祭などで演奏し、それからしばらく年を経てからの会社員時代 も、同僚とオリジナル曲のみを演奏するバンドを組んだりもしてきた(もちろん趣味で)。

そういったなかで、まず最初に何が一番重要だったか と思い出してみると、やはりバンド名を決めることだったと思う。格好から入るのは得てして(実力もないのになどといった)批判の対象になりやすいが、いち早くメンバー間の結束を固めるには非常に合理的なことのように思う。バンド名が決まるまでは、メンバーが集まって練習していても、何だか浮き足立ったよう な感じで、キマらない。だが、バンド名を決めた途端にメンバー間には何ともいえない共有意識のようなものが芽生え、それからはバンド名が勲章のようにメン バーの意識や姿勢を引張っていくようなことがあった。

そういった経験から、趣味でロックミュージックを聞く側にいても、音楽の中身はもちろ んだが、自然とバンド名にも関心が向く。これは個人の好みでしかないが、いくつか自分が好きで気に入っている楽曲はやはりそのバンド名のイメージが、いつ しか音楽に冠を載せている。ここは音楽談議の場所ではないので音楽性について述べるのは避けるが、そのバンド名(もちろん音楽性も)に特に感心し、影響を受けたロックバンドのなかの一つとして挙げたいバンドがある。その名を「Hi-STANDARD」という。

ここで種明かしすると「Hi-Welding」の「Hi-」はこのアルファベットでのロゴの並び、音楽的センス、既成を切り開いていこうとする姿勢に共感し、拝借したものである。

こ の5年、通過点としてこの「Hi-Welding」という名に恥じない仕事をやって来れたかと自問してみるが、自問して結論が出るものではないとすぐに気 付く。すべては出荷した製品を実際に使用して下さるお客様に判断を委ねるだけだ。今後もわたしにとってのスタンダードである技術=「ウェルディング」を高い意識で極めていくことで、それが実の世の中の役に立つよう継続、発展させていきたいと思っている。

ちなみに、会社員時代のバンド名は「The Weld(ザ・ウェルド)」だった。メンバー4人中2人が溶接工だったのである。